第89回アカデミー賞ノミネート予想:1

実に1年ぶりの更新となります。
アカデミー賞の季節となってきましたので、やはり毎年やっていることは今年もやらなくてはなりません。

1月24日に発表される、第89回アカデミー賞ノミネートの予想をまとめたいと思います。
例年通り、
・現地メディアの下馬評
・批評家賞や組合賞との関連傾向
・配給会社とアカデミー賞の相性
を考慮に入れた上で、全部門の予想を軽めのコメント付きで記しておきます。
(各部門赤文字は受賞予想です)


●作品賞
『ムーンライト』(A24)
『ラ・ラ・ランド』(ラインズゲイト)
『マンチェスター・バイ・ザ・シー』(アマゾン/ロードサイドアトラクションズ)
『LION/ライオン 25年目のただいま』(ワインスタイン)
『メッセージ』(パラマウント)
『Fences』(パラマウント)
『Hidden Figures』(20世紀フォックス)

『ジャッキー ファーストレディ最後の使命』(サーチライト)
『最後の追跡』(CBSフィルムズ)


まずは作品賞。3強は揺るがないが、いずれもインディ系の会社。となるとメジャー会社も負けてはいられない。必然的に20世紀フォックスの『Hidden Figures』とパラマウントの『メッセージ』『Fences』は、製作者組合賞の候補入りも果たしているので入ってくるだろう。同じく製作者組合賞入りを果たした『LION/ライオン』もだ。
しかも、監督組合賞候補作は作品賞に入る可能性が非常に高いので、『LION/ライオン』と『メッセージ』はほぼ当確。

ここまでで7枠が決まり、残りは最大で3枠。さすがに10本の候補ができる可能性は低い。
例年のようにノミネートされる会社では、サーチライトから『ジャッキー』、ワーナーから『ハドソン川の奇跡』、フォーカスから『ラビング』とあるが、同系統の少なさと、かろうじて高い評価を維持している『ジャッキー』だけが残るか。
あとは『最後の追跡』が入るかどうか。『Hacksaw Ridge』はライオンズゲイトが『ラ・ラ・ランド』の受賞に賭けてくる公算が強く、外す。



●監督賞
デイミアン・チャゼル『ラ・ラ・ランド』
バリー・ジェンキンス『ムーンライト』
ケネス・ロナーガン『マンチェスター・バイ・ザ・シー』
ガース・デイヴィス『LION/ライオン』
マーティン・スコセッシ『沈黙サイレンス』


監督賞は混戦。3強作品はそのまま問題ないとして、残りの2枠が問題だ。
気になるところは、3強の3人がいずれもアメリカ人監督だという点。この6年、監督賞はいずれもアメリカ人以外の手に渡っている。少なからず、アメリカ外の監督が入る可能性があるということだ。となると、イギリスのデヴィッド・マッケンジー、チリのパブロ・ラライン、オーストラリアのガース・デイヴィスとメル・ギブソン。
監督組合賞に入った点を考慮して、デイヴィスを指名。もっとも、カナダのドゥニ・ヴィルヌーヴが入ってくる可能性も高いか。
また、基本的には作品賞と重なる部分が強いが、ベネット・ミラーの時のような現象も充分ありうる。しかも今年は若手の台頭が目立つ。ベテランが一人入ってバランスを保つなら、最も愛されているスコセッシだろう。



●外国語映画賞
『Toni Erdmann』(ドイツ)
『The Salesman』(イラン)
『ヒトラーの忘れもの』(デンマーク)
『タンナ』(オーストラリア)
『Paradise』(ロシア)

例年の傾向では、最終選考9作に入った、最も強い映画を受賞指名。残りの8作を、4つの地域に分ければノミネートはほぼ固まる。
今年なら、ドイツの『Toni Erdmann』の独壇場。アジア枠は『The Salesman』で、この2枠は固まる。
厄介なことに、他の部分が混迷。デンマーク、ノルウェー、スウェーデンの北欧枠では『ヒトラーの忘れもの』となるだろう。
スイスのアニメ映画『My Life as a Zucchini』はGKidsが長編アニメ賞に賭けてくるとみて外し。3大映画祭受賞作でもある『Paradise』と、昨年の『彷徨える河』のような未開の地の空気感を重んじて『タンナ』。ドランはここに入るタイプの作家ではない。


●長編アニメーション賞
『ズートピア』
『モアナと伝説の海』
『Kubo and the Two Strings』
『My Life as a Zucchini』
『ファインディング・ドリー』

まず、ディズニー系3作の取捨選択が最大の問題だ。『ズートピア』は確実に残るとして、人間が主人公の『モアナと伝説の海』も確実。ピクサー作品の『ファインディング・ドリー』が、大ヒットの効果で入る可能性に、最後まで悩まされる。
いずれにせよ、ライカ制作の『Kubo and the Two Strings』は問題ないだろう。前述した、『My Life as a Zucchini』は、近年毎年のように候補入りを果たすGKids配給のヨーロッパアニメ。これも堅い。
となると残りの1枠である。個人的には『レッドタートル』を推したいが、ヨーロッパ作品で食い合う可能性と、ソニーピクチャーズクラシックの動き方次第で極めて不安定。やはり『ファインディング・ドリー』に功労の意を与えるか。


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