【2015年まとめ】2015年鑑賞新作ベスト30

さて、今年もこの季節がやってまいりました。
2015年の年間ベストの発表を始めたいと思います。

寄稿している媒体で、(2015年に鑑賞した)2015年公開作のベストテンを先に発表してしまいましたので、
上位の作品に関しては、薄々見当がついていることかと思います。
とはいえ、こちらでは2015年に鑑賞し、自分の中での基準を満たしている作品からのランキングを発表するので、多少変動があります。

基準は以下のとおり。
対象年(2015年)に鑑賞した、54分以上の商業映画・TVムービー作品・劇場用再編集版で、次の条件のいずれかを満たすもの。
1、対象年とその前年に制作された作品
2、対象年とその前年に国内で劇場初ロードショー(7日間)された、対象年を含む10年以内の作品
3、対象年とその前年に国内で未公開(7日間以上上映されていない)でソフトリリースもしくは全世界ネット配信された、対象年を含む5年以内の作品
4、対象年に映画祭もしくは特集上映で鑑賞した、対象年を含む5年以内制作の作品
5、既公開の劇場版に対して、リマスターが施されたのみのものは上記の通りではない

相変わらずやたら厳しいですが、10年以上この基準でやってきてますので悪しからず。


さて、今年は上記の基準を満たした作品は228本

その中で、200本を差し置いた、上位30本を紹介していきます。カウントダウン形式です。
それでは、順番にどうぞ。





第30位『クリムゾン・ピーク』
(ギレルモ・デル・トロ監督)
12月に滑り込みで鑑賞した2016年公開作。詳しいことは年明けにリアルサウンドのほうで評論がアップされますので、そちらを読んでいただければ。
舞台となる屋敷がとにかく魅力全開。一応ホラー映画の様式をなぞっていますが、ダークなメロドラマに落とし込めているあたり、監督の前々作『パンズ・ラビリンス』のファンは必見の一本。



第29位『イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密』
(モルティン・ティルダム監督)
妙な苦手意識で敬遠してしまっていたことを後悔するほどの見事な出来栄え。今年のオスカー候補作の伝記映画の中でも最も気に入った一本。
いまひとつ、劇中で大活躍する装置の仕組みがよくわからないまま終わるというのが、なんとも興味をそそられる。美術、衣装、音楽が非常にバランスよく、本来の英国映画らしい上品な仕上がり。色味もGOOD。



第28位『アース・トゥ・エコー』
(デイヴ・グリーン監督)
今年の大サプライズ作の一本。山崎貴監督の『ジュブナイル』に心を奪われた世代が、少し成長してから観たら、おそらくラストで涙が止まらないでしょう。なので、あと5年早く作られていればもっと上位に来たはず……。
POV映画としても非常に上手い作り方であり、VFXも悪くない。全体を通して地味な作りではあるが、何よりも90分に満たない短い尺は有難い。



第27位『バクマン。』
(大根仁監督)
こちらは今年の邦画の中でも最大のサプライズ。ジャンプ漫画に詳しくなくても、ストレートな物語と圧巻の映像パフォーマンスに痺れる。
とにかくペンの音や紙が擦れる些細な音を丁寧に拾い上げたことが、この映画の最大の強み。そしてエンドロールで登場する漫画の背表紙を模したスタッフクレジット。エンドロールに載ることよりも、あれを作ってもらえるなんて羨ましすぎる……!



第26位『悲しみの忘れ方 DOCUMENTARY of 乃木坂46』
(丸山隆志監督)
おなじみのAKB系グループのドキュメンタリー映画諸作の中でもずば抜けたクオリティを誇ったのが本作(何も乃木坂箱推しだからってわけではない)。
ドキュメンタリー映画として理想的な構成と、踏み込んだ題材でありながら、あくまでもこれがアイドル映画だということを忘れていない潔さ。そして、生駒里奈の映画的な動木の数々。秀作。


第25位『心が叫びたがってるんだ。』
(長井龍雪監督)
『あの花』のスタッフが、なんて触れ込みは必要ない。とはいえ、岡田麿里脚本の秀逸さを、冒頭シーンから見せつけられる。
同じ岡田脚本の「true tears」をどことなく想起させるキャラクターたちのアンサンブル。そして最後で流れる乃木坂46の主題歌のマッチングも見事。今年のハイレベルな日本アニメ映画の中で群を抜いた一本。



第24位『くまのアーネストおじさんとセレスティーヌ』
(バンジャマン・レネール、ステファヌ・オビエ、ヴァンサン・パタール監督)
何度も何度も映画祭などで上映される機会がありながら、タイミングを逃してきたオスカー候補作が、ようやく日本でロードショー公開されたわけで。嬉しい反面、吹替えしかやらなかったことにショックを受ける。(結局ロードショーで観ていないのでオリジナル言語で鑑賞しましたが)
年に一本は良質なフレンチアニメに出会えないと、身体に良くないと実感。



第23位『サンドラの週末』
(ジャン=ピエール・ダルデンヌ、リュック・ダルデンヌ監督)
個人的には『ロゼッタ』以来のダルデンヌ作品大当たり。
プロットだけ聞くと、何故この筋書きで映画が成立するのか、さっぱりわからないが、観てみると完全に映画だとしか言いようがない。それがダルデンヌの巧さなのか……(まあ他の作品もプロットだけではあまり映画的ではないし)。
コティヤールの演技については、言わずもがな。



第22位『おんなのこきらい』
(加藤綾佳監督)
昨年のMOOSIC LABで上映され、今年の2月にロードショー公開されたインディーズ作品。えーっと、森川葵が「私、可愛いですから」と言うだけで、納得しないわけにはいかないです。
ふぇのたすによる歌曲の秀逸さと、明確でありながら不快感を感じさせない脚本の勝利。加藤監督の作品はもっと観てみたい。



第21位『サウルの息子』
(ネメシュ・ラーズロー監督)
今年世界中で大旋風を巻き起こしたハンガリーの恐ろしすぎる怪作。
ひたすら主人公の表情、背中だけを追い続け、何が起きているのかを直視させないがゆえに、画面上に表出する残酷さと狂気に、ひたすら息を飲む。
年明け早々に日本で公開予定。もっとも、正月気分で観るような映画ではないですのでお気をつけて。アカデミー賞でも旋風を巻き起こすこと期待。



第20位『テラスハウス クロージングドア』
(前田真人監督)
テラスハウス?ああ、家で「あいのり」やってるやつね、っていう偏見をぶっ飛ばすほど鮮烈な一本。今年冒頭の日本映画の大サプライズ。
数名の男女による、極めて狭い範囲での恋愛模様や友情の変遷を、リアリティに固執して作り上げたシナリオの巧妙さ。舞台となる家の作りと、台詞に比重を置いた見せ方。ナメてかかると損をする。



第19位『JUNUN』
(ポール・トーマス・アンダーソン監督)
今年の下半期に、「観た?」「え、観てないの?」っていう映画話らしいやり取りが最も盛んだったのはやっぱりこれ。本当はもっと上位でも良かった気はするけれど、もっと長く観たかったという意味も込めて。ちなみに上映時間は55分なので、ギリギリ基準を満たしたのでランクイン。
PTA作品の中でも上位に食い込む大傑作。



第18位『バードピープル』
(パスカル・フェラン監督)
パスカル・フェラン久しぶりの新作は、想像を遙かに超える奇跡に満ち溢れたファンタジー。アナイス・ドゥムースティエの印象的な演技。小鳥になるって、何となく『ときめきトゥナイト』を思い出したり(余談)。
評論を書かせてもらっておりますので、こちらもぜひ。http://realsound.jp/movie/2015/10/post-241.html




第17位『先輩と彼女』
(池田千尋監督)
今年の少女漫画映画代表は問答無用でこれ!『カノ嘘』以来のシネスコの少女漫画映画に、志尊×芳根のカップリングで文句なし。
夏祭りのシーン、そして階段で飴をばらまくシーンなど、映画として楽しいショットの連続。もちろん、原作が好きっていうのもあります。そしてエンドで流れるaiko!
ああ、こんな記事もあります。http://realsound.jp/movie/2015/10/post-255.html



第16位『黒衣の刺客』
(ホウ・シャオシェン監督)
今年一番映画を観ている喜びが大きかったのはこの作品だろうか。しかもシネコンで、アカデミー比の画面を見せられることに若干の抵抗はあったものの、(一部ビスタになるから仕方ないけど)輝度が強く感じるデジタル映写でも最前列で何度も観てしまった。
いや、内容については100%理解できてはおりませんが、そんなことは映画には必要のないことです。



第15位『セッション』
(デミアン・チャゼル監督)
いやー、面白かった。という言葉が思わず溢れる、今年を代表する傑作。
資金調達のために作られた短編版を先に鑑賞しておりましたが、そこでのJ.K.シモンズの恐ろしい演技を超えるほどの本番での演技の数々に、言葉を失う。
テンポ感も間違いなくよく、この手のインディーズ映画をきちんと評価できるハリウッド映画界に頭が上がらなくなる。



第14位『ナイトクローラー』
(ダン・ギルロイ監督)
こちらもアカデミー賞レースで大きな話題となったインディペンデント映画。
わかりやすく狂った人間を描くことは、映画においてはすごくありきたりな描写に陥りやすいものの、これはギルロイの脚本の力か、ギレンホールの演技力か、まったく違和感を感じさせず、紛れもなく狂った奴を観せられた。



第13位『映画ひつじのショーン 〜バック・トゥ・ザ・ホーム〜』
(マーク・バートン、リチャード・スターザック監督)
アードマンの『ウォレスとグルミット』以外の長編アニメは失敗続き(『アーサー・クリスマス』はまあまあか)だったけれど、これは大当たり!
台詞が無い分、動きだけで徹底的に見せる容赦無いモーションの数々に、とにかく楽しいひと時を過ごせる。娯楽映画の最たるもので、全年齢向けであることも素晴らしい。それにしても、何度見ても羊っぽくは見えない。



第12位『シンデレラ』
(ケネス・ブラナー監督)
ディズニーが自社の代表的な作品を実写で作り出すとなったら、どうやったって失敗作になるはずは無い。そんな期待に応えるどころか、大きく上回ってきたのは、一にも二にもケネス・ブラナーの徹底した美意識があってこそ。
フィルムで撮られた映像に、完全にフィットさせられた特殊効果の数々。そして青を意識したカラリングと、全総力を活かして築き上げられたファンタジー映画の金字塔。



第11位『BACKSTREET BOYS:SHOW'EM WHAT YOU'RE MADE OF』
(スティーブン・キジャック監督)
こんな映画やってたの?って言われそうですが、やってました。日本では特別上映的な感じで、入場料金も高く取られてましたが、ソフトリリースはされないのでしょうか。
中学時代に最も熱中した、というより、リアルタイムで初めて追いかけた洋楽アーティストのドキュメンタリー映画。懐かしい曲から現在の彼らまで。音楽界の頂上と底辺を味わった男たちの珠玉のドラマがここにある。



第10位『さらば、愛の言葉よ』
(ジャン=リュック・ゴダール監督)
85歳になられて何で3D映画を撮ろうと思ったのか、答えはひとつ。彼がジャン=リュック・ゴダールだからだ。
映像の遊びを徹底的に楽しみ抜き、内容もそれほど難解ではないのを見ると、ゴダールはまだまだ面白い映画を作り続けてくれるのではないかと期待してしまう。とくに左と右でまったく違う映像を見せるという、3Dの仕組みを利用した遊びには脱帽。



第9位『裁判の行方』
(ヤン・ヴェルヘイエン監督)
観ている間に、こんなにいろんなことを考えた作品は久しぶりです。(それを踏まえた解説コラム記事は本ブログ中にあるので、気が向いたら是非)
海外の裁判制度についてこれほど判りやすく描いてくれる作品はあまりなく、徹底された硬派な仕上がりに、刑法専攻の法学部出身者としては、興味をそそられ続ける。日本で劇場公開は難しくとも、ソフトリリースはしていただきたい。



第8位『ジュラシック・ワールド』
(コリン・トレヴォロウ監督)
本当に、今年上映された続編ものやリブートものを見ると、一体今が何年なのかわからなくなりそうです。その一端を担ったのが、この映画。もちろんシリーズファンに向けたサービスもしかり、前作(あまり前作扱いしたくないけど)から14年でさらなる進化を遂げたVFX技術の見本市としての位置付けもしかり。B級パニックホラーとして一級品の娯楽映画に仕上げられている。トレヴォロウ、すげーよ。



第7位『アンジェリカの微笑み』
(マノエル・ド・オリヴェイラ監督)
二度に渡る日本公開の頓挫、そしてそのどちらの会社もすでに倒産。ある意味呪われた映画として話題だった本作が、ついに三度目の正直を果たす。クレスト・インターナショナルさん、本当にありがとうございます。おかげでオリヴェイラの、詩的世界を存分に楽しむことができただけでなく、あの素晴らしい浮遊シーンを観ることができました。「死」に対する扱い方が、これほどポジティブに描かれていることに好感。



第6位『タンジェリン』
(ザザ・ウルシャゼ監督)
アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされた、エストニアとジョージア(いまだにグルジアって言いたくなっちゃう)の合作映画。
非常に静かに時は流れ、淡々とした作りであるが、そこに込められている反戦のメッセージの強さに心揺さぶられる。5月の末にEUフィルムデーズで鑑賞。本当に、いい映画をかけてくれる上映会だと思います。



第5位『たまこラブストーリー』
(山田尚子監督)
昨年の4月に公開し、スルーしてしまっていた本作を、今年に入りようやく鑑賞。ほんっっっっっっとうにごめんなさいとしか言いようがない。最高でした。歴史的名作アニメの誕生です。
鑑賞後に、一気に(未見だった)「たまこマーケット」を全話鑑賞。ヒロイン北白川たまこの可愛さ、そして最後の京都駅でのシーンは泣きすぎて正視できず。これだけの映画が作れる京都アニメーションの意欲には驚き。



第4位『海街diary』
(是枝裕和監督)
カンヌ国際映画祭への出品で、今年の邦画を代表する一本に。とはいえ、是枝監督作品が苦手な身としては、サプライズでしかなかった。女優4人のアンサンブル、桜の咲き誇る道でのあおりショット、鎌倉の情景、ほとんどのシーンをスクリーンにかじりつくように観てしまったわけで。
最大のサプライズは、長澤まさみの華麗なる復活に他ならない。



第3位『海にかかる霧』
(シム・ソンボ監督)
近年の韓国映画界ではすっかり主流となった、ダークミステリー。観ていて本当にツラい。だけども、目を背けたくなる事実に真っ向から向き合い、泥臭いほどの人間ドラマを構築。本当に韓国映画は強い。
ラストカットの間の取り方が実に見事で、脚本を務めたポン・ジュノの名前だけで一人歩きさせるのは非常に勿体なく。最高です。



第2位『国際市場で逢いましょう』
(ユン・ジェギュン監督)
正直最後まで上位3本の順位は入れ替わってもおかしくないと思いつつも、ここに落ち着く。今年一番泣き続けた映画。もちろん、数多く登場する近代韓国史の知識が無いと、ただの大げさな物語に思えてしまうような作品ではあるし、私の嫌いな『フォレスト・ガンプ』と比較されてしまうのは癪ではあるが、全ジャンルを一本の映画に集約させるという韓国映画界の姿勢が、見事に形になった濃密さに、ただただ圧倒される。



第1位『ラブバトル』
(ジャック・ドワイヨン監督)
迷いに迷った今年のベストはやはりこれ。ジャック・ドワイヨン。実は『ポネット』と『小さな赤いビー玉』と『ピストルと少年』しか観たことがなかったので、どういう作品を出してくる作家か予想がつかなかった。それだけに、あまりに力強くねじ伏せてくるフィジカルの強さと、随所に見受けられる繊細さのギャップに打ちのめされ、呆然とスクリーンを見つめることしかできず。終わった瞬間には、他の人は別の映画で連呼していたように「やばい」という言葉しかでてこ無いほど、言語中枢を麻痺させるほどに強靭な怪作。早くソフト化してください。



0 件のコメント:

コメントを投稿