【第86回オスカー受賞予想】第7回:脚本賞&脚色賞

つづいては、重要部門のひとつである脚本賞と脚色賞です。


作品賞を占う上でかなり重要なこの部門。
もちろん、オリジナル脚本を評する「脚本賞」と、原案や原作を映画用に創り直す「脚色賞」は作品が被ることはありません。

第1回から始まった部門で、第13回からは二つの部門に分けられます。
第21回のときだけひとつの部門でまとめられますが、
両部門に候補に挙がらずに作品賞を受賞した作品は、

第1回『つばさ』
第2回『ブロードウェイ・メロディ』
第5回『グランドホテル』
第6回『カヴァルケード』
第9回『巨星ジークフェルド』
第21回『ハムレット』
といった1部門の年では6回(13回中)ほどありますが、

それ以外の72回では
第25回『地上最大のショウ』
第38回『サウンド・オブ・ミュージック』
第70回『タイタニック』
の3回しか無いのです。


つまり、今年は作品賞有力の『ゼロ・グラビティ』がいないことが大きなポイントになりそうです。
それでは各部門の予想をしていきましょう。



●脚本賞

◎『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』
『アメリカン・ハッスル』
『ブルージャスミン』
『ダラス・バイヤーズクラブ』
『her 世界でひとつの彼女』


こちらの方は最重要前哨戦の脚本家組合賞の脚本部門と完全一致しました。
ちなみに、組合賞受賞はスパイク・ジョーンズの『her 世界でひとつの彼女』でした


脚本家組合賞が、ドラマ部門とコメディ部門の分類を失くした84年度以降29回で、脚本部門の受賞作がオスカーに輝いたのは18回。ノミネート止まりも6回ですが、昨年の『アルゴ』など5本が候補入りしていないのです。(これは、脚本家組合賞の規定を満たさない未エントリー作品である場合なのですが)

好確率で直結するだけに、『her』の首位は動じないようにも思えますが、怖いのはスパイク・ジョーンズ作品がどこまで受け容れられるか。過去の『マルコヴィッチの穴』と『アダプテーション』は組合賞もオスカーも候補止まり。

ただ、去年は『ジャンゴ 繋がれざる者』が受賞して小さなサプライズを起こした部門だけに、非常に予想が困難なところ。

近10年間で作品賞候補に挙がらなかった作品の受賞は『エターナル・サンシャイン』の1度だけなので、『ブルージャスミン』は外せたとしても、残りがすべて作品賞候補であるのが厄介な所。

アレン作品や西部劇、戦争、政治など比較的保守的な題材が受賞し易い傾向にあることを考慮すると、『ネブラスカ』が選ばれる気もするが、今回は脚本がアレクサンダー・ペインではないということが引っかかる所。

とはいえ、初ノミネートでも受賞できるこの部門。
『her』か『ネブラスカ』の二択の中で、考えられるのは『her』が完全に無視される光景の方が強いので、『ネブラスカ』を推す。



●脚色賞

◎『ウルフ・オブ・ウォールストリート』
『キャプテン・フィリップス』
『ビフォア・ミッドナイト』
『それでも夜は明ける』
『あなたを抱きしめる日まで』


脚色賞は何らかの原案や原作を映画用に翻案したものです。一例を挙げると、小説や戯曲、別の映画作品やテレビ作品などにオリジナルが起案されているものです。
近年の特徴としては、第62回の『ドライビングMissデイジー』を最後に、舞台の翻案映画は受賞しておりません


今年は『ビフォア・ミッドナイト』を除く4作品が、ノンフィクション書籍の翻案ということで、こういう年はかなり珍しいというか、おそらく例がありません。

創作の小説以外の作品での受賞例から考察すると、
・政治や人種問題を題材にした作品(『戦場のピアニスト』『アルゴ』など)
・成功者の波乱の人生を綴ったもの(『ソーシャル・ネットワーク』『ビューティフル・マインド』など)に二分されるかと。


脚本賞と同様にこちらでも脚本家組合賞の脚色部門の結果を踏まえて考えてみましょう。
84年以降の29回で、オスカー受賞作が組合賞を勝ち取ったのは20回。これは脚本賞よりも多い割合です。
候補止まりなのは6本で、第60回の脚色賞受賞作『ラストエンペラー』が組合賞では脚本部門で候補に入れられていたことを考えると、7本。
選考外も含み、候補入りを果たせなかったのは『戦場のピアニスト』と『アマデウス』の2本のみ。

今年は有力どころの『それでも夜は明ける』が選考外になっていたのが気にかかるところ。
受賞したのは『キャプテン・フィリップス』。しかし他の前哨戦では軒並み候補止まりだったのが引っかかる点。
『それでも夜は明ける』と『あなたを抱きしめる日まで』は組合賞に候補入りしていない点が減点材料になるとして、

『ウルフ・オブ・ウォールストリート』と『ビフォア・ミッドナイト』の二択になる。

脚色賞を続編映画が受賞した例は2度。『ゴッドファーザーPART2』と『ロード・オブ・ザ・リング王の帰還』。どちらも原作があり、原作に則したシリーズものであった。
ではそれ以外で候補入りをしたのは何があるか。『トイ・ストーリー3』と『ビフォア・ミッドナイト』の前作『ビフォア・サンセット』だけなのである。

そうなると、『ウルフ・オブ・ウォールストリート』だけが残る
ナショナル・ボード・オブ・レビュー賞を受賞し、批評家賞も何賞か受賞。作品自体も勢いを継続しているが、他の部門では受賞圏内にいないだけに、獲るならばここしか無いだろう。






0 件のコメント:

コメントを投稿