【第86回オスカー受賞予想】第6回:撮影賞&編集賞

さてここからは極めて重要な部門を簡潔にまとめて行きましょう。

今回は撮影賞と編集賞です。


●撮影賞

◎『ゼロ・グラビティ』
『インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌』
『グランド・マスター』
『プリズナーズ』
『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』



撮影は映像の根幹を担うので、もちろん映画においては極めて重要。
第1回から始まっているこの撮影賞は、過去に作品賞と併せて受賞する作品は25本
また、作品賞受賞作が撮影賞の候補に挙がることは52回と、まずまずの直結率。

とはいえ、今年のメンバーを見てわかる通り、作品賞路線とは違ったメンバーが顔を出すことが度々あります。
映像表現を前面に押し出したアクション映画や、サスペンス映画、またファンタジー映画が挙がることもしばしばあり、また最近では今年のようにロジャー・ディーキンスがカメラを回すとノミネートされることもあります。かれこれ11度目の候補ですが、毎年恒例の参加賞なので、気にしないでおきましょう。


そして、カラー時代になって作られるモノクロ映画は割と頻繁に候補入りしますが、作品賞受賞作『アーティスト』をはじめ、『白いリボン』や『バーバー』など、どれも候補止まりに終わり、せいぜいカラーパートも有している作品賞受賞作の『シンドラーのリスト』が受賞するに留まっているのも頭においておきましょう。


重要前哨戦と呼ばれるASC(アメリカ撮影監督組合賞)との兼ね合いを比べてみると、
過去27回の受賞作でオスカーに輝いたのはたったの10本。おっと……。

とはいえ、カラーとモノクロの分類終わり統一された1967年(第40回)以降の撮影賞受賞作で、作品賞の候補に挙がっている作品は36本。
46回中36回が作品賞候補作で決まっているのだから、今年は『ネブラスカ』か『ゼロ・グラビティ』にしぼられていいだろう。

ちなみに、作品賞に挙がらなかった10本のうち7本が美術賞にノミネートされていたり、『天国の日々』は衣装デザイン賞の候補に挙がり、『ライアンの娘』は主演女優賞候補に挙がり助演男優賞を受賞している。
目に見えるものが無かったのは作曲賞と脚色賞候補だった『リバー・ランズ・スルー・イット』だけなのだ。

つまり、あるとするなら衣装デザイン賞候補の『グランド・マスター』だが、可能性は極めて薄い。
前述の通り、モノクロ作品が相手にされないのであれば、『ゼロ・グラビティ』がここも受賞することになるだろう。



●編集賞

◎『ゼロ・グラビティ』
『それでも夜は明ける』
『アメリカン・ハッスル』
『ダラス・バイヤーズクラブ』
『キャプテン・フィリップス』


裏の作品賞と呼ばれる超重要部門がこの編集賞。見てわかる通り、今年も作品賞の有力作が顔を並べています。

第7回から始まったこの部門で、過去に作品賞と編集賞を併せて受賞したのは35本(79本中)。
作品賞受賞作で、編集賞候補から漏れたものはたったの8本しか無く、しかも81年以降はすべて作品賞受賞作が候補入りしているのだから、この中から作品賞が決まるといっても過言ではない。

つまり、今年のキーワードは「グリーングラスか作品賞受賞作」

何だかんだで編集賞に強い監督がいます。それは今年はポール・グリーングラスです。彼が獲ると作品賞予想が難解を極め、それ以外が獲れば作品賞が決まるわけです。

最重要の前哨戦である、アメリカ編集監督組合賞の結果は、
ドラマ部門……『キャプテン・フィリップス』
コメディ・ミュージカル部門……『アメリカン・ハッスル』

となり、『ダラス・バイヤーズクラブ』は候補入りしませんでしたが、『それでも夜は明ける』と『ゼロ・グラビティ』は同じ部門に入っていた『キャプテン・フィリップス』に完敗したわけです。

過去の組合賞を見ると、『Z』と『ウエスト・サイド物語』を除くオスカー編集賞受賞作はすべてこの組合賞に候補入りもしくは受賞しているわけです。(つまり『ダラス・バイヤーズクラブ』は超可能性薄)

そしてドラマ部門とコメディ・ミュージカル部門に分けられた99年以降で、後者の方からオスカーに輝いたのは『シカゴ』1本のみ。(『アメリカン・ハッスル』も危うい)


そして。組合賞過去52回で、オスカー受賞作が同賞を受賞したのは37回(コメディ・ミュージカル部門の『シカゴ』も含む)
つまり圧倒的に受賞作である『キャプテン・フィリップス』が優勢になるわけです。

ただ気になるのは、『スターウォーズ』や『アポロ13』『ライトスタッフ』といったSF系映画が軒並み組合賞を獲れずに編集賞に輝いているのも事実。やはり『ゼロ・グラビティ』には期待してしまいますよね。


『キャプテン・フィリップス』か『ゼロ・グラビティ』の二択。
クリストファー・ラウズは前回『ボーン・アルティメイタム』で組合賞と連勝しています。一方、アルフォンソ・キュアロンは『トゥモローワールド』でオスカー候補になりながら逃していることも。
獲らせたいのは『ゼロ・グラビティ』。可能性が五分五分ならば、『ゼロ・グラビティ』を推す。




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