【第86回オスカー受賞予想】第2回:長編ドキュメンタリー賞&短編各賞

第2回の今回は、短編各賞と長編ドキュメンタリー賞を分析します。
先に長編ドキュメンタリー賞からやりましょうか。


●長編ドキュメンタリー賞

◎『アクト・オブ・キリング』
『Dirty Wars』
『The Square』
『キューティー&ボクサー』
『バックコーラスの歌姫たち』


時々大波乱が起きるこの部門。
さすがに今年は『アクト・オブ・キリング』で間違いないと思います。

念のため、ほかの作品を過去の傾向から見直してみましょうか。

ドキュメンタリー映画は大きく分けると以下の通りに分類されます。
・政治
・経済
・芸術
・社会問題
・スポーツ
ちょっとざっくり過ぎますかね。

まず「芸術」に該当する『キューティー&ボクサー』と『バックコーラスの歌姫たち』。
昨年こそ、『シュガーマン 奇跡に愛された男』が受賞しましたが、なんと芸術分類の作品は(『マン・オン・ワイヤー』をそれに含まないとすれば)第62回の『Maya Lin』まで遡らなければなりません。どんな傑作もスルーされてきたのです。
80年代頃は比較的台頭していたこのジャンルですが、やはり社会情勢が不安定になってくると、もっとも旬な話題が取沙汰されることが多くなります。

故に、近年は「経済」ネタが最強なのです。
ところが、今年はその題材が無く、残りの二本はアフガン戦争をジャーナリストが追った『Dirty Wars』と、アフリカの春を描いた『The Square』。
この二本から選ぶとすれば、明らかに『The Square』でしょう。

ただ、同じ発展途上国の革命運動のひとつを取り上げた題材として、今年は『アクト・オブ・キリング』に勝るセンセーショナルな題材はないだろう。
作品のクオリティ、また他の映画祭等の国際的評価を考えても、この映画に与えないわけにはいかないだろう。



●短編ドキュメンタリー賞

◎『The Lady in No.6 : Music Saved My Life』
『Facing Fear』
『Karama has no Walls』
『Cave Digger』
『Prison Terminal : The Last Days of Private Jack Hall』



この部門もまた、ドキュメンタリーなので
・政治
・経済
・芸術
・社会問題
・スポーツ
に分類しよう。

簡潔に述べると、長編は政治や経済もあるが、この部門はほぼ一択で「社会問題」がものすごく強い傾向にある。
と、今年はなんとまあ『Cave Digger』以外はすべて社会系の内容じゃないですか。四択になります。
ホロコーストの生存者の女性を描いた『The Lady in No.6』、
イエメンでの抗議運動を描いた『Karama Has no Walls』、
ゲイの少年の路上生活を描く『Facing Fear』、
刑務所でのボランティアを映した『Prison Terminal』

どれも可能性はありそうだが、ここは最も保守的な題材の『The Lady in No.6』と、最も革新的な題材の『Facing Fear』の二択になることを予想する。
しかし、路上生活する若者を描いた作品ならば、昨年の『Inocente』と似通った部分があるのではないだろうか。となると、最も票を集め易い『The Lady in No.6』へ軍配が上がる



●短編映画賞

◎『全てを失う前に』(フランス)
『Helium』(デンマーク)
『結婚式の朝』(フィンランド)
『Aquel No Era Yo』(スペイン)
『The Voorman Problem』(イギリス)


非常に予想の立てづらいこの部門。
近年は3年連続で英語映画が受賞しています。
以前はほとんどが英語圏の作品だったのですが、短編映画が国際色豊かになりつつあるなかで、あらゆる国から集まるようになったのでしょう。
今年は英語以外の作品が選ばれる可能性も充分にあるわけです。もっとも、英語作品はイギリスの『The Voorman Problem』一本のみです。すこしこの部門にはシリアスすぎるのでは。
同じくスペインの『Aquel No Era Yo』も政治色を感じます。

この部門は純粋なヒューマンドラマが獲り易いように思えるだけに、残りの3本に焦点を絞ります。
近年、デンマーク語作品が3度、フランス語作品が2度受賞している点を参考にしても、ファンタジー色の強い『Helium』、コメディ色の強い『結婚式の朝』も考えづらい。

消去法でフランス『全てを失う前に』が無難なチョイスだろう。
個人的には『Helium』に受賞してもらいたいのだけれど。



●短編アニメーション賞

◎『ミッキーのミニー救出作戦』
『Feral』
『Mr. Hublot』
『九十九』
『Room on the Bloom』


ミッキーの勝ちです。以上です。

これだけで終えて良いと思うくらいなんですけど、せっかくなので。
日本の『九十九』も置いといて、この部門の歴史をさらっと。

実は第5回から始まっている歴史ある賞なのです。

初期の頃はウォルト・ディズニーの独壇場。といっても、「シリーシンフォニー」シリーズばかり受賞していて、当時から存在していたミッキーマウス主演作は1本も受賞していないんです。
40年代には『トムとジェリー』(MGM)が台頭する時代に入り、50年代にはルーニー・チューンズを筆頭にしたワーナー作品の時代になります。
そして第32回以降は大手以外のアニメーション作家に光が当てられるようになったのです。

それでもウォルト・ディズニー傘下の作品はコンスタントに候補入りし、くまのプーさんはオスカー受賞者ですが、ミッキーマウスはいまだにノミネート止まりなのです。
そんなわけで第56回の『ミッキーのクリスマス・キャロル』以来のノミネートになったミッキーマウスさん。誰もが今度こそ受賞させたいと思うでしょう。
何せ今年のアカデミー賞のテーマは「ヒーロー」ですから。彼以上の世界的ヒーローはいません。
万が一があるんなら『Feral』かな。



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