【第86回オスカー受賞予想】第12回:監督賞

さて、作品賞の次に重要な監督賞。

●監督賞

まず以前のノミネート予想の際に言ったことを復習しましょう。

「近3年連続でアメリカ人が獲っていない」

昨年のアン・リー、その前のミシェル・アザナヴィシウス、トム・フーパーと、近3年が外国人の受賞となっているこの部門。
今年の有力どころはメキシコ人のアルフォンソ・キュアロンと、イギリス人のスティーブ・マックイーン。対するアメリカ人からの筆頭は、やはりデヴィッド・O.ラッセルだろう。

この3人をそれぞれ比べてみると、
キュアロンと同じメキシコ人監督のノミネートは第79回『バベル』のアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ以来2人目

一方マックイーンと同じ黒人監督はジョン・シングルトン、リー・ダニエルズの2人だけなので、
どちらも確率的にはかなりレアな部類に入る。



アメリカ、イギリスどちらの国でもない監督の受賞は
古くはマイケル・カーティス、最近では前述のアン・リー、アザナヴィシウスや、ベルトルット、ポランスキーなどがいるが、ほとんどが一度ノミネートされた経験を持つ監督ばかり。
出身がアメリカ(イギリスなど英語圏)じゃない国で、亡命や移住などでアメリカ国籍を持っている監督でも、
フランク・キャプラ
ウィリアム・ワイラー
ビリー・ワイルダー
フレッド・ジンネマン
マイク・ニコルズ
といったアカデミー賞お馴染みの人々は、かならず一度ノミネートだけされてから受賞に漕ぎ着けたのである。

ミロス・フォアマン、エリア・カザン、フランクリン・J.シャフナー
だけが、初候補で初受賞している非英米圏出身監督であり、カナダ出身のジェームズ・キャメロンとNZ出身のピーター・ジャクソンも初候補で初受賞している。


メキシコは英語圏ではないが、仮にも隣国なので可能性は充分だが、まだ少し懸念する声があるのも事実。
前哨戦の批評家賞などで圧勝していてもまだ少し不安が残るデータです。



ところで、最重要前哨戦であるアメリカ監督組合賞。今年の受賞者は前哨戦圧勝だったアルフォンソ・キュアロンなのですが、
過去に組合賞に輝いて、オスカーを逃した監督は以下の通り。

1968年アンソニー・ハーヴェイ『冬のライオン』(オスカーはキャロル・リード『オリバー!』)
1972年フランシス・フォード・コッポラ『ゴッドファーザー』(オスカーはボブ・フォッシー『キャバレー』)
1985年スティーブン・スピルバーグ『カラーパープル』(オスカーはシドニー・ポラック『愛と哀しみの果て』)
1995年ロン・ハワード『アポロ13』(オスカーはメル・ギブソン『ブレイブハート』)
2000年アン・リー『グリーン・デスティニー』(オスカーはスティーブン・ソダーバーグ『トラフィック』
2002年ロブ・マーシャル『シカゴ』(オスカーはロマン・ポランスキー『戦場のピアニスト』)
2012年ベン・アフレック『アルゴ』(オスカーはアン・リー『ライフ・オブ・パイ』)


組合賞第1回の48年の受賞者ジョセフ・L.マンキーウィッツは翌年にオスカー候補になったため、49年の協会賞受賞者ロバート・ロッセンはマンキーウィッツにオスカーを譲る構図になりましたが、それ以外の50年以降、63回でわずかに7度しか外していないのです。

しかも、スピルバーグとハワード、アフレックはノミネートすらされなかったので、ノミネートされていれば受賞を逃す確率はわずかに6.6%!ざっくり見積もっても、15回に1回しかないのです。

これはキュアロンで間違いないでしょう。



◎アルフォンソ・キュアロン『ゼロ・グラビティ』
スティーブ・マックイーン『それでも夜は明ける』
デヴィッド・O.ラッセル『アメリカン・ハッスル』
マーティン・スコセッシ『ウルフ・オブ・ウォールストリート』
アレクサンダー・ペイン『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』




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