【第86回オスカー受賞予想】第10回:主演女優賞

残りが4つとなりました。

まずは今年最も堅実なレースが続いている主演女優賞。



●主演女優賞


今年は前哨戦から『ブルージャスミン』のケイト・ブランシェットの圧勝。
対抗枠も『ゼロ・グラビティ』のサンドラ・ブロックら、受賞経験者ばかりの超豪華メンバーでほぼ固まっていましたが、ノミネートの段階で有力視されていた『ウォルト・ディズニーの約束』のエマ・トンプソンが外れるというサプライズがあり、代わりに入ったのがノミネート経験豊富な『アメリカン・ハッスル』エイミー・アダムス

実質的に前哨戦の俳優組合賞も駆け抜けたケイト・ブランシェットが受賞することはほぼ間違いないでしょう。

俳優組合賞主演女優賞の受賞者のオスカー成績は、過去19回で13回合致。さらに、『愛を読むひと』でオスカーに輝いたケイト・ウィンスレットを除けば全員が俳優組合賞に候補入りしています。そのウィンスレットも、同じ年の『レボリューショナリー・ロード』で主演女優賞候補、オスカー受賞作『愛を読むひと』では助演女優賞を受賞していますから、実質的には直結していると見て間違いは無いかと。

なので、俳優組合賞候補落ちのエイミー・アダムスが受賞することはほぼゼロに近い状態

では残りの3人でケイト・ブランシェットを負かすことができるのは誰か。

まずブランシェットのウィークポイントを探ってみる。
対象作『ブルージャスミン』のウディ・アレン映画は女優部門で最も強いデータがある。

ただ、主演女優賞候補はこれまでに2人。受賞したのは『アニー・ホール』のダイアン・キートンのみで、『インテリア』のジェラルディン・ペイジは敗れています。
助演女優賞には、過去9度候補に挙がり(今年のサリー・ホーキンスを入れたら10回になる)、受賞したのはダイアン・ウィーストの2度を含み4回。

投票期間中に出た、ウディ・アレンのスキャンダルの影響はほぼ無いといわれているけど、果たしてそれはどうなのだろうか。現に、今年はメリル・ストリープによってレイシスト発言を受けたウォルト・ディズニーの映画でエマ・トンプソンが落選しているし、ネガティブキャンペーンの影響は封筒を開けてみないと何とも言えない状態。

ちなみに、過去に助演女優賞でオスカーに輝いた女優が、主演女優賞にも輝いた例は3度あるが、そのうち2回はメリル・ストリープである。残り1度は『トッツィー』で助演を獲った12年後に『ブルースカイ』で主演を受賞したジェシカ・ラング。
また、主演女優賞受賞経験者の受賞は、キャサリン・ヘップバーンを除けば12人いて、可能性的にはこちらの方が高い。

さらに主演女優賞の特徴としては、これはオスカー全体の特徴でもあるのだが、「実在の人物」を演じた役者が強いという傾向があり、ここ20年のうち主演女優賞では11回が実在の人物を演じた受賞者で決まっている。(対する主演男優賞は20年間で8度)
面白いことに、俳優組合賞受賞者を敗った例のうち前述のウィンスレットの年以外の5度すべてが、実在の人物を演じた女優が逆転受賞をしているのである。

そうなると、ケイト・ブランシェットの独壇場を最後の最後で崩すことができるのは『あなたを抱きしめる日まで』のジュディ・デンチただ一人ということになる。


余談ではあるが、過去20年間で、イギリス人女優の主演女優賞成績を見ると受賞が2回、ノミネートが25回。と、毎年のように候補入りしている現状。
確かに、頭数が多い上に全体的にイギリス系に弱いオスカーの状態を考えると当然の数字ではあるが、気になるのはこれではいくらなんでも順当すぎないか、という点。


思い起こしてみれば、
第84回はミシェル・ウィリアムズの受賞ムード一色だったのが、メリル・ストリープが受賞。
第82回はキャリー・マリガンが前哨戦独走して、最後の最後で重要な所だけ持って行ったサンドラ・ブロックがそのまま戴冠。
第80回もジュリー・クリスティの悲願を土壇場でマリオン・コティアールが打ち崩し、
第75回のときなんてほぼジュリアン・ムーアで間違いなかったのが、予想外のニコール・キッドマンだった顛末。
波乱が起きるのはいつもこの部門


ただ共通点は、逆転受賞者は全員ゴールデングローブ賞を獲っている点。そうなるとエイミー・アダムスか?



そういえば、今年はひっそりと影を潜めているハーヴェイ・ワインスタインというオスカーの黒幕。
彼が今年出してきているのは『あなたを抱きしめる日まで』と『8月の家族』のみで、両方が候補入りしているのはこの主演女優賞の枠だ。
一時期は『あなたを抱きしめる日まで』で作品賞獲りを狙う発言が出ていたが、それ以降何も聞かないとなると、諦めているとは思えない。
英国アカデミー賞の時にはジュディ・デンチのキャンペーンが思うようにできていない旨の発言をしていたのも逆に引っかかる。
7度目のノミネートとなったジュディ・デンチ。あと1回でジェラルディン・ペイジに並ぶ歴代4位のノミネート数になるが、加齢黄斑 変性を患っていることを告白した後最初の候補となった本作。引退をするつもりは無い発言をしていることが非常に逞しいが、それでも出演作はかなり限られてくるだろう。
とってもミーハーな傾向もある主演女優賞。ジェシカ・タンディの最年長受賞記録にはあと1歳及ばないけれど、ジュディ・デンチが受賞する可能性があるなら今年ではないだろうか。


ただ、どうしてもブランシェットの壁がかなり高い。





ところで『ブルージャスミン』は、今回の作品賞候補には入っていません。今年の候補作で、作品賞候補になっているのは『あなたを抱きしめる日まで』『ゼロ・グラビティ』『アメリカン・ハッスル』の3本。

ここで余談ですが、

過去20年間の主演女優賞ノミネートの中で、作品賞候補作品を調べてみると、


主演女優賞5枠のうち、作品賞候補作品の数が1本か0本だった年は、2004年と2008年と2009年を除いて作品賞候補ではない作品の主演女優が受賞しています。
では、その例外を見てみると、

2004年は作品賞と主演女優賞が一致。受賞作が女性主人公の『ミリオンダラー・ベイビー』
2008年と2009年はイギリス人女優(ヘレン・ミレンとケイト・ウィンスレット)

つまり、作品賞内包率が20%以下の年は、例外ケースを除いて作品賞候補作以外が獲る可能性が高い。
逆に、作品賞内包率が40%を超える年は、例外ケースとして2001年の黒人女優初の主演女優賞受賞に輝いたハル・ベリー『チョコレート』を除き、すべて作品賞候補作から受賞者が出ている


この法則を使うと、今年は作品賞内包率60%。前述の3名が受賞可能性が高いわけで。
作品賞枠が増えた近4年だけで見ても、作品賞候補外の作品から主演女優賞が出たケースは2011年のメリル・ストリープだけで、この年の作品賞内包率は20%でした(つまり1本だけ)。(他の年は09→3、10→3、12→4)



そうすると、
1、今年は3本の作品賞との合致があるので作品賞受賞作から
2、受賞するために必要なのは俳優組合賞で最低でも候補入り
3、逆転するために必要なのはゴールデングローブ賞受賞
4、実在の人物を演じているとプラス


ケイト・ブランシェット……2と3
サンドラ・ブロック……1と2
ジュディ・デンチ……1、2、4
メリル・ストリープ……2
エイミー・アダムス……1と3


もうサンドラ・ブロックでいいんじゃないかwww

対象作を観た主観を入れると、メリルの作品だけは未見なので比較できないが、

サンドラ>デンチ>>アダムス>ブランシェット

なのです。

ほぼ9割形ケイト・ブランシェットが獲ると思いますが、





◎ジュディ・デンチ『あなたを抱きしめる日まで』
サンドラ・ブロック『ゼロ・グラビティ』
ケイト・ブランシェット『ブルージャスミン』
エイミー・アダムス『アメリカン・ハッスル』
メリル・ストリープ『8月の家族たち』


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