【第86回オスカー受賞予想】第1回:外国語映画賞&長編アニメ賞

アカデミー賞の授賞式まであと2週間を切りました。
ここからは、ノミネート段階での各部門の受賞予想を細かくやっていこうと思います。


予定は以下の通りです。

第1回:外国語映画賞、長編アニメーション賞
第2回:短編各部門、長編ドキュメンタリー賞
第3回:主題歌曲賞、作曲賞
第4回:視覚効果賞、録音賞、音響効果賞
第5回:美術賞、衣装デザイン賞、メイキャップ&ヘアスタイリング賞
第6回:撮影賞、編集賞
第7回:脚本賞、脚色賞
第8回:助演女優賞
第9回:助演男優賞
第10回:主演女優賞
第11回:主演男優賞
第12回:監督賞
第13回:作品賞


まず第1回の今回は、日本にも馴染みの深い作品が挙がることの多い外国語映画賞長編アニメーション賞です。



●外国語映画賞

◎『追憶のローマ』(イタリア)
『オーバー・ザ・ブルースカイ』(ベルギー)
『偽りなき者』(デンマーク)
『The Missing Picture』(カンボジア)
『Omar』(パレスチナ)


外国語映画賞の前身は、第20回に始まった「特別賞」と、第24回からの「名誉賞」です。第26回は実施されませんでしたが、8度行われ、翌年の第29回から外国語映画賞と生まれ変わったのです。
この前身の時代、なんと受賞する国がほとんど決まっている状態でした。
フランスが3回、日本が3回、イタリアが2回。
この3国で賄っていた時代、日本は黒澤明・衣笠貞之助・稲垣浩とそれぞれ違う監督でしたが、フランスのルネ・クレマンとイタリアのヴィットリ・デ・シーカが各2回づつ。ほとんど彼らに挙げるための賞だったのでしょうか。

この3国の強さというのは顕著に現れており、第29回から始まった外国語映画賞で、この3国の内ひとつでも候補入りしなかったのは第57回まで一度もなかったのである。

昨年までの全57回のうち、

伊仏日すべて候補入り→2度(両年ともイタリアが受賞)
伊仏が候補入り→17度(うち伊4、仏6)
仏日が候補入り→3度(うち日1、仏0)
伊日が候補入り→5度(伊2、日0)
フランスのみ→14度(受賞は3)
イタリアのみ→3度(受賞は2)
日本のみ→2度(受賞は0)
三国すべて候補落ち→11度

今年はフランスも日本もいません。となると、イタリア1国のみの候補入り。
過去に3度あるそれは、第68回でオランダの『アントニア』が受賞した年(イタリアはトルナトーレの『明日を夢見て』)のみ敗れましたが、受賞確率は66.6%。

もっとも受賞に近いのは史上最多の10度の戴冠をしているイタリアで間違いないと見る。

ちなみに、他の国を見ると、
デンマークは過去9度候補入りし、3度受賞。そのうち2度はイタリアもフランスも日本もいない年です。イタリアとフランスがいた第60回は『バベットの晩餐会』で受賞。あれほどの人気を集めていない気がするが……。

カンボジア初ノミネート。過去に初ノミネートで初受賞を果たしたのはスウェーデン(ベルイマン作品)、チェコ・スロバキア(チェコヌーヴェルヴァーグ時代)、ソビエト(ボンダルチュクの『戦争と平和』)、アルジェリア(フランス語作品)、コートジボワール(フランス語作品)、ボスニア・ヘルツェゴビナ。
世界的名作や、映画ムーブメントの最中であったりと、曰くを除けばボスニアだけ。ただし、ボスニア・ヘルツェゴビナの受賞作『ノー・マンズ・ランド』は最有力で突っ走っただけに、受賞すれば歴史的なことだが、かなり分が悪い。

またパレスチナも、同様に2度目の候補ではあるが評価がそれについてきていない。

怖いのはベルギー。『オーバー・ザ・ブルースカイ』は家族愛、家庭崩壊、尊厳死、911、音楽といったアメリカが好みそうな題材が全部乗せられている作品。
過去6度の候補で一度も戴冠していないことが気がかりであるのと、この映画がベルギーの映画である必要性はどうかが焦点になるだろう。ヒュルーニンゲンでは作家のパワーも弱い。




●長編アニメーション賞

◎『アナと雪の女王』
『風立ちぬ』
『怪盗グルーのミニオン危機一発』
『クルードさんちのはじめての冒険』
『アーネストとセレスティーヌ』



この部門を占う最重要な前哨戦はもちろんアニー賞。
2001年から始まったこの部門、過去のアニー賞と比べてみましょう。

(左が長編アニメーション賞受賞作、右がアニー賞作品賞受賞作)
2001年→『シュレック』『シュレック』
2002年→『千と千尋の神隠し』『千と千尋の神隠し』
2003年→『ファインディング・ニモ』『ファインディング・ニモ』
2004年→『Mr.インクレディブル』『Mr.インクレディブル』
2005年→『ウォレスとグルミット野菜畑で大ピンチ』『ウォレスとグルミット野菜畑で大ピンチ』
2006年→『ハッピーフィート』『カーズ』
2007年→『レミーのおいしいレストラン』『レミーのおいしいレストラン』
2008年→『WALLEウォーリー』『カンフーパンダ』
2009年→『カールじいさんの空飛ぶ家』『カールじいさんの空飛ぶ家』
2010年→『トイストーリー3』『ヒックとドラゴン』
2011年→『ランゴ』『ランゴ』
2012年→『メリダのおそろしの森』『シュガーラッシュ』

過去12回で4度だけ異なる結果になったわけです。
わかる特徴は、
アカデミー賞はピクサー映画を愛して止まないけれど『カーズ』は嫌い。
アニー賞は二年連続で同じ会社には与えないのが基本だけれど、続編が嫌い。

つまり、今年はノミネート段階で『モンスターズユニバーシティ』が落ちる大波乱がありました。
アニー賞は『アナと雪の女王』です。
先ほどの原則に従うと、昨年に続いてディズニーが獲っているじゃないかとなるけれど、

今年のアニー賞は

『アナと雪の女王』→昨年の覇者ディズニー
『風立ちぬ』→ジブリだけどディズニー
『モンスターズユニバーシティ』→続編
『怪盗グルーのミニオン危機一発』→続編
『アーネストとセレスティーヌ』→GKids
『ももへの手紙』→GKids
『クルードさんちのはじめての冒険』→ドリームワークス

ちなみにアニー賞は、過去すべてひっくるめても
・ディズニー(ピクサーやジブリ含む)
・ワーナー
・ドリームワークス(アードマンの『ウォレスとグルミット』含む)
以外が獲ったのは『ランゴ』ただ一回の超保守的集団なのです。

なのでGKidsはもちろん獲れません。本当なら、この原則通りなら『クルードさんちのはじめての冒険』が獲ってしかるべきなのに獲れなかったのは、それだけ弱いということの証です。

さらに、アニー賞で『アナと雪の女王』に完敗している『風立ちぬ』もまた、それだけパワー不足を露呈したわけです。
では、正面からぶつからなかった『怪盗グルー』『アーネストとセレスティーヌ』を考えると、後者はフランスアニメ。『ベルヴィル・ランデブー』も『イリュージョニスト』も『ペルセポリス』も勝てなかった舞台で勝てますか?勝てませんね。
最も怖いのは『怪盗グルーのミニオン危機一発』何てったって、昨年の興収ベスト1……だったのに、気が付いたら超大ヒットの『アナと雪の女王』に負けてます。
もう特大ヒットの看板は使えません。

故に、『アナと雪の女王』が獲ることがもっとも可能性の高いことであるわけです。









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