【予想】第86回アカデミー賞各部門予想5:監督賞

さて、今回は非常に重要な部門、監督賞を予想してみようと思う。

前哨戦がスタートし、ますます混迷を期している今年のオスカーレースではあるが、最終的にこの舞台に残るのは5人。じっくりと吟味したいものである。

この部門、実は3年連続で外国人監督が受賞しているのである。


第85回 アン・リー台湾
(ノミネート)
スティーブン・スピルバーグ(米)
デヴィッド・O.ラッセル(米)
ベン・ザイトリン(米)
ミヒャエル・ハネケ(

第84回 ミシェル・アザナヴィシウス
(ノミネート)
ウディ・アレン(米)
テレンス・マリック(米)
アレクサンダー・ペイン(米)
マーティン・スコセッシ(米)

第83回 トム・フーパー
(ノミネート)
ダーレン・アロノフスキー(米)
ジョエル&イーサン・コーエン(米)
デヴィッド・フィンチャー(米
デヴィッド・O.ラッセル(米)

など、
アメリカ人しか候補入りしなかった年は第82回、第80回。
それを除くとほとんどの年で、しかも77年の第50回アカデミー賞を最後に、そこから30年の間必ずと言っていいほど外国人監督が入っている。
といっても、その多くはイングランドやアイルランドなど、イギリス系の監督が入ってくるということだ。それは他の外国人監督がいても入ってくる可能性があることだが、

たとえば2002年の第75回。
受賞者であるロマン・ポランスキーはポーランド人。
ノミネート入りにはスペインのペドロ・アルモドバルと、イギリスのスティーブン・ダルドリーがいた。

あとは2000年の第73回。
スティーブン・ソダーバーグが2枠で候補に挙がり、残りの3枠はイギリス人のスティーブン・ダルドリーとリドリー・スコット、そして台湾のアン・リーだったのだ。

ましてや第60回においては、
受賞がベルナルド・ベルトルッチ(伊)、
ノミネートにはジョン・ブアマンとエイドリアン・ライン(英)、ノーマン・ジュイソン(加)、ラッセ・ハルストレム(典)と、北米人はいたとしても全員が非米国人監督だった珍しい年である。



では今年の有力どころに外国人監督がどれだけいるのか。

<イギリス>
スティーブ・マックイーン『12Years a Slave』
スティーブン・フリアーズ『あなたを抱きしめる日まで』
ポール・グリーングラス『キャプテン・フィリップス』

<メキシコ>
アルフォンソ・キュアロン『ゼロ・グラビティ』

<カナダ>
ジャン=マルク・ヴァリー『ダラス・バイヤーズクラブ』
ドゥニ・ヴィルヌーヴ『プリズナーズ』

<フランス>
アブデラティフ・ケシシュ『アデル、ブルーは熱い色』

<イラン>
アスガー・ファルハディ『The Past』



そしてもうひとつ注目しておきたいことは、
作品賞の候補枠が5以上になった第82回以降、監督賞の候補者5人はすべて作品賞候補作から出ているのである。(ちなみに直前の第81回も作品賞5作品から監督賞候補が固められました)
今までも、基本的に毎年3本は作品賞と監督賞と同時候補に挙がる作品があって、作品賞受賞の絶対条件とされているのが監督賞ノミネートなのである。

しかし、
第5回 『グランドホテル』(エドマンド・グールディング)
第62回 『ドライビングMissデイジー』(ブルース・ベレスフォード)
第85回 『アルゴ』(ベン・アフレック)
の3作品だけが、監督賞候補にならなかった作品賞受賞作であり、

また、
第1回 『美人国二人行脚』(ルイス・マイルストン)
第2回 『情炎の美姫』(フランク・ロイド)
だけが、作品賞候補に挙がらなくして監督賞を受賞したのである。

つまり、両方に候補入りして初めて、どちらかを受賞するチャンスを得られると言っても過言ではないほど重要な賞なのである。


 
まず有力どころから確認しておきたい。

前述のイギリス人監督、スティーブ・マックイーン『12Years a Slave』だ。

アフリカ系監督でこの部門にノミネートされたのは、意外なことに
第64回 ジョン・シングルトン『ボーイズ’ン・ザ・フット』
第82回 リー・ダニエルス『プレシャス』
のただ2人だけ。
もちろん受賞経験もないことから、歴史的な受賞を期待する声も少なくない。


一方で、対抗格にあるアルフォンソ・キュアロン『ゼロ・グラビティ』

こちらも極めてサンプルが少ない中南米系の監督である。メキシコ出身のアルフォンソは、キャリアとしてはイギリスやアメリカで作品を多く生み出しているが、

第58回 エクトール・バベンコ『蜘蛛女のキス』(アルゼンチン)
第76回 フェルナンド・メイレレス『シティ・オブ・ゴッド』(ブラジル)
第79回 アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ『バベル』(メキシコ)

この3人しか候補経験がないのが中南米監督とオスカーの関係である。もちろんこちらも受賞経験がないだけに、この2人の一騎打ちとなればどちらになっても歴史的快挙であることは変わりない。


待ち構えるアメリカの監督から、ダークホース。
3年前の『ザ・ファイター』でノミネートのあと、昨年の『世界にひとつのプレイブック』で旋風を巻き起こしたデヴィッド・O.ラッセル『アメリカン・ハッスル』

何かと問題児扱いされてきたラッセルですが、最近は批評家からも愛される良作を連発。
なかなか完成されなくて我々をウズウズさせた『アメリカン・ハッスル』は、11月下旬に何とか完成。その途端に批評家賞を受賞するなど、今年も大旋風を巻き起こしている彼。

ちなみに、今回3度目の正直がかかっているということで、過去に監督賞初受賞の5年以内に2度ノミネートされてから受賞を遂げた監督を探してみると、

第26回 フレッド・ジンネマン『地上より永遠に』(第21年『山河遥かなり』、第25回『真昼の決闘』)

ただ一人。しかし、初受賞の前年にノミネートされて2年連続候補で受賞を成し遂げた監督は、
第7回 フランク・キャプラ『或る夜の出来事』(第6回『一日だけの淑女』)
第15回 ウィリアム・ワイラー『ミニヴァー夫人』(第14回『偽りの花園』)
第16回 マイケル・カーティス『カサブランカ』(第15回『ヤンキー・ドゥードゥル・ダンディー』)
第18回 ビリー・ワイルダー『失われた週末』(第17回『深夜の告白』)
第40回 マイク・ニコルズ『卒業』(第39回『バージニア・ウルフなんて怖くない』)

の5人。錚々たる顔ぶれが並んでいるが、やはり勢いが大事。もっとも旬なアメリカ人監督を、オスカー会員たちは到底無視することはできないだろう。


これら3人は確定状態として、あと2枠。
まず外国人枠は2人入っているとはいえ、イギリス人がもうひとりいても大丈夫であろう。ということで、ポール・グリーングラス『キャプテン・フィリップス』



そして、残り1枠が非常に難しいところ。
リー・ダニエルス『大統領の執事の涙』も捨て難いが、アフリカ系監督のデータ上、2人同時に上がることはそうそう考えにくい。
となると、やはりアメリカ人監督。

筆頭はナショナル・ボード・オブ・レビューを制したスパイク・ジョーンズ『Her』である。

99年に『マルコヴィッチの穴』で突然ノミネートされて以降、あまり賞レースには顔を出さなかった彼が、本作は絶大な評価を得ている。気になるのは『ゼロ・グラビティ』と同じワーナーが配給という点。作品賞候補はほぼ当確であるこの作品から監督賞候補が出ても全然おかしくはないのだけれども……。

万が一に、保険を掛けてみるのであれば、前作『しあわせの隠れ場所』が大逆転ノミネートを果たしたジョン・リー・ハンコック『ウォルト・ディズニーの約束』が気になる。


今回の有力どころの中で最もアメリカ的な映画を撮る彼だけに、根強いファンがいることも事実。(数年前の『アラモ』のリメイク版の失敗はあれど)
本作から主演女優賞の有力コンテンダーを出している点では、女優を賞に送り込む名手として今後名を馳せて行っても何ら不思議ではないかも。。。



予想はこちら↓↓
◎ デヴィッド・O.ラッセル『アメリカン・ハッスル』
◯ アルフォンソ・キュアロン『ゼロ・グラビティ』
▲ スティーブ・マックイーン『12Years a Slave』
△ ジョン・リー・ハンコック『ウォルト・ディズニーの約束』
△ ポール・グリーングラス『キャプテン・フィリップス』

(Possible…)
スパイク・ジョーンズ『Her』
リー・ダニエルス『大統領の執事の涙』
スティーブン・フリアーズ『あなたを抱きしめる日まで』





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