さて、やっと助演女優賞の予想に参りたいと思います。
近年の受賞者は以下の通り。
第85回 アン・ハサウェイ『レ・ミゼラブル』
第84回 オクタヴィア・スペンサー『ヘルプ』
第83回 メリッサ・レオ『ザ・ファイター』
第82回 モニーク『プレシャス』
第81回 ペネロペ・クルス『それでも恋するバルセロナ』
という、演技部門の中でも極めて、国籍やキャリア問わず受賞できる部門であることは間違いなく、
第30回 ミヨシ・ウメキ『サヨナラ』(日本)
第34回 リタ・モレノ『ウエスト・サイド物語』(プエルトリコ)
第37回 リサ・ケドロヴァ『その男ゾルバ』(ソビエト)
などの多様な国や地域からの受賞者を輩出。
もちろん、黒人の受賞者も多く、
第12回 ハティ・マクダニエル『風と共に去りぬ』
第63回 ウーピー・ゴールドバーグ『ゴースト ニューヨークの幻』
第79回 ジェニファー・ハドソン『ドリームガールズ』
とモニーク、オクタヴィア・スペンサーと、計5人の受賞者を出している。
今年は下馬評を覗くと有力どころに黒人女優の名前が目立つ。
まずは85年に『カラーパープル』での候補入り経験を持つオプラ・ウィンフリー『大統領の執事の涙』
余裕綽々でいらっしゃるこの写真。久しぶりの好ロールで、受賞も見えていると早くから言われている彼女。最近はアニメ声優やプロデュース業など、よくよく考えれば出演作が滅法少ないのですが(声の出演を除いて長編劇映画の出演はわずか5本!)その知名度は抜群。
受賞するためにはやはり同作主演のフォレスト・ウィテカーのノミネート入りも重要になってくるが果たして。。。
そして、対抗馬として急激に名前を上げてきているのがルピタ・ニョンゴ『12yeas a slave』である。
誰ですか?知りません。これが長編デビュー作というのだから、これだけの高評価につつまれることは最早運命としか言いようがないのかも。
まったくの無名だったり新人女優が突然ノミネートされることは、この部門では比較的当然のことで、
近年では
第84回 ジェシカ・チャスティン『ヘルプ』
ベレニス・ベジョ『アーティスト』
第83回 ヘイリー・スタインフェルド『トゥルー・グリット』
第81回 タラジ・P・ヘンソン『ベンジャミン・バトン数奇な人生』
第80回 シアーシャ・ローナン『つぐない』
第79回 ジェニファー・ハドソン『ドリーム・ガールズ』(受賞)
アドリアナ・バラッザ『バベル』
菊池凛子『バベル』
など、ほぼ毎年のように全然知られていない女優が候補入りしてくるのである。
この二人に挑むのは、アメリカを代表する二人のスター女優。しかも二人共オスカー女優という箔がついているのだ。
まずは昨年の主演女優賞受賞者ジェニファー・ローレンス『アメリカン・ハッスル』
そして第73回に『エリン・ブロコビッチ』で主演女優賞を獲得したジュリア・ロバーツ『August: Osage County』である。
主演女優賞受賞者の、助演部門の候補歴を調べてみたところ、
やはり主演女優賞に挙がる女優は主演女優賞で挙がり続けることが多く、思いのほかサンプルは少なかったのであるが、
ヘレン・ヘイズ(第5回『マデロンの悲劇』)→第43回『大空港』受賞
ジェニファー・ジョーンズ(第16回『聖処女』)→第17回『君去りし後』ノミネート
イングリッド・バーグマン(第17回『ガス燈』、第29回『追想』)→第47回『オリエント急行殺人事件』受賞
マギー・スミス(第42回『ミス・ブロディの青春』)→第51回『カリフォルニアスイート』受賞(ほか候補2回)
ジェーン・フォンダ(第44回『コールガール』、第51回『帰郷』)→第54回『黄昏』ノミネート
サリー・フィールド(第52回『ノーマ・レイ』、第57回『プレイス・イン・ザ・ハート』)→第85回『リンカーン』ノミネート
メリル・ストリープ(第55回『ソフィーの選択』)→第75回『アダプテーション』ノミネート
ジェシカ・タンディ(第62回『ドライビングMissデイジー』)→第64回『フライド・グリーン・トマト』ノミネート
キャシー・ベイツ(第63回『ミザリー』)→第71回『パーフェクトカップル』、第75回『アバウト・シュミット』ノミネート
エマ・トンプソン(第65回『ハワーズ・エンド』)→第66回『父の祈りを』ノミネート
ホリー・ハンター(第66回『ピアノ・レッスン』)→第76回『サーティーン』ノミネート
フランシス・マクドーマンド(第69回『ファーゴ』)→第73回『あの頃ペニー・レインと』ノミネート
ヘレン・ハント(第70回『恋愛小説家』)→第85回『セッションズ』ノミネート
という感じに13人が候補入りし、3人が受賞しているのだ。
しかも、70年代後半頃から急激に増えてきたのは、映画産業の仕組みが変わりつつあったからであって、それに付随してマルチに主演も助演もこなす女優が増えてきたからであろう。
とりあえず、近年ではノミネート止まりが多く受賞の可能性は高くはないが、候補入りの可能性は否定できない。
ほかに評価の高く、気になるところでは
早急なオスカー受賞が期待されるキャリー・マリガン『Inside Llewyn Davis』
主人公の母親役という、この部門で最近贔屓されがちな役どころを掴んだ受賞経験者オクタヴィア・スペンサー『Fruitvale Station』
同様に主人公の義母役を演じる実力派エミリー・ワトソン『The Book Thief』
おなじくこの部門で評価され易い、主人公の妻役を演じるジューン・スキッブ『ネブラスカ』
そして、今年一番気になるところは声だけの出演ながらローマ国際映画祭で女優賞を獲得してしまったスカーレット・ヨハンソン『Her』だろう。
それぞれ配給会社がどう攻めてくるかがまだ見えない段階では、かなりの混戦模様となっているこの部門である。
ちなみに、ジュリア・ロバーツの『August:Osage County』からはマーゴ・マーティンデイル。
ジェニファー・ローレンスの『アメリカン・ハッスル』ではエイミー・アダムス。
そのエイミー・アダムスはスカーレット・ヨハンソンの『Her』にも出演しているなど、同じ作品内での争いも激化している非常にややこしい状況です。
ところが、この部門は過去85回中30回、同じ作品の女優が2人以上入ってきているのです(「以上」と付けたのはすべて『トム・ジョーンズの華麗な冒険』のせいです)。
もしかしすると、これからさらなる大混戦が待っているのではないだろうか……。
予想はこちら↓↓
(LOCK)
◎オプラ・ウィンフリー『大統領の執事の涙』
◯ルピタ・ニョンゴ『12Years a Slave』
▲ジェニファー・ローレンス『アメリカン・ハッスル』
(以下から2枠)
1.ジューン・スキッブ『ネブラスカ』
2.ジュリア・ロバーツ『August : Osage County』
3.エミリー・ワトソン『The Book Thief』
4.スカーレット・ヨハンソン『Her』
5.キャリー・マリガン『Inside Llewyn Davis』
6.オクタヴィア・スペンサー『Fruitvale Station』
★★★次回はニューヨーク批評家協会賞とナショナル・ボード・オブ・レビューの結果の雑感を交え、監督賞を予想します。
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