前回の主演男優賞でも軽く触れましたが、作品賞受賞作とかぶることが意外にも少ないこの部門。過去85回のうち、同年の作品賞と主演女優賞が同じ作品だったことは僅か11回。
しかも、そのうち6本は男優とのダブル主演だったり、実質的に主演なのか疑わしいケースが多い。
<ダブル主演のケース>
第7回 クローデット・コルベール『或る夜の出来事』
第50回 ダイアン・キートン『アニー・ホール』
第64回 ジョディ・フォスター『羊たちの沈黙』
第71回 グウィネス・パルトロー『恋に落ちたシェイクスピア』
<主演?のケース>
第9回 ルイーゼ・ライナー『巨星ジーグフェルド』
第48回 ルイーズ・フレッチャー『カッコーの巣の上で』
一方で、以下の5人は堂々と主演を張り、主演女優賞に輝いている。
第12回 ヴィヴィアン・リー『風と共に去りぬ』
第15回 グリア・ガースン『ミニヴァー夫人』
第56回 シャーリー・マクレーン『愛と追憶の日々』
第62回 ジェシカ・タンディ『ドライビングMissデイジー』
第77回 ヒラリー・スワンク『ミリオンダラー・ベイビー』
要するに何が言いたいかというと、今年最も重要な映画である『ゼロ・グラビティ』は作品賞と主演女優賞を両方獲れるのかということだ。
サンドラ・ブロックが『しあわせの隠れ場所』で初受賞したのが2009年。
過去に二度この賞を受賞している女優は13人(4度受賞のキャスリン・ヘップバーンを含む)。これは、3度受賞のダニエル・デイ=ルイスを含めても9人しか複数回受賞していない主演男優賞に比べると確率はかなり高い。
しかも、2度目の受賞は初受賞から3〜7年に集中しているので、4年ぶりの受賞というのは非常に自然なことになるのであろう。
ちなみに10年以上間隔を開けて再受賞したのはヴィヴィアン・リーとイングリッド・バーグマン(それぞれ12年)、メリル・ストリープ(29年)、キャスリン・ヘップバーン(39年ぶりだった2度目と、13年ぶりだった4度目)と、歴史の教科書に載ってもおかしくないレベルの大女優だけなのである。
サンドラはそこまでの女優なのか?……うーむ。となると、獲るなら今年しかない。
さて、話を元に戻して、近年の傾向からノミネートを割り出していこうと思う。
近5年の受賞者は以下の通り
第85回:ジェニファー・ローレンス『世界にひとつのプレイブック』
第84回:メリル・ストリープ『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』
第83回:ナタリー・ポートマン『ブラック・スワン』
第82回:サンドラ・ブロック『しあわせの隠れ場所』
第81回:ケイト・ウィンスレット『愛を読むひと』
となっている。
ちょっと気になることがある。
2000年のジュリア・ロバーツ『エリン・ブロコビッチ』以降、2002年のニコール・キッドマン『めぐりあう時間たち』、2006年のヘレン・ミレン『クイーン』を含み、2003年から毎年2年ごとに実在の人物を演じた女優が受賞しているのがわかる。
第76回:シャーリーズ・セロン『モンスター』(アイリーン・ウォーノス)
第78回:リース・ウィザースプーン『ウォーク・ザ・ライン』(ジューン・カーター)
第80回:マリオン・コティアール『エディット・ピアフ愛の讃歌』(エディット・ピアフ)
以下上記の第82回、第84回とつづき、今年が第86回である。
ノミネートだけに関していえば、
・まったく作品賞等に絡んでこない作品からのノミネートも充分ある。
・若手女優やアイドル女優が意外にもノミネートされることも。
・最年長とか最年少とかお祭りごとが好き。
といったところだろうか。
そう、意外にもこの部門はミーハーなのである。
そしてもちろん、実在の人物に弱い。
過去20年を遡っても、実在の人物を演じた女優が1人も候補に挙がらなかったのはたったの4回!ただ、怖いことにそのうち2回が近3回で起こっていることも覚えておきたい。
となると、もっとも脅威なのはこの人である。
エマ・トンプソン『ウォルト・ディズニーの約束』
そんな顔しても駄目です。
あの『メリー・ポピンズ』の作者パメラ・トラバースを演じた彼女は、今年の有力どころでは唯一の実在の人物を演じた女優。
そして、21年前に『ハワーズ・エンド』でオスカー主演女優賞を獲得後も、主演に2度、助演に1度ノミネートされ、95年には『いつか晴れた日に』で脚本賞も受賞。
最近相手にされていなかったのは作品に恵まれなかったから。間違いなく彼女はオスカーに愛されているのである。
他の有力どころはすべてフィクションの人物を演じているが、かなりの強者揃い。
まず下馬評では筆頭となっているのがケイト・ブランシェット『ブルージャスミン』である。
オスカー女優量産機との高名で知られるウディ・アレンの最高傑作との噂も高い本作で、キャリア最高との呼び声も高い彼女。過去に『アビエイター』で助演は獲得済みであるが、主演部門では代表作の『エリザベス』の1、2作目で挙がった2回のみ。他の役どころで候補に挙がりたいはず。
ましてやそれがウディ・アレン映画なら尚更。
第50回:ダイアン・キートン『アニー・ホール』での主演女優賞を皮切りに、
第59回:ダイアン・ウィースト『ハンナとその姉妹』
第67回:ダイアン・ウィースト『ブロードウェイと銃弾』
第68回:ミラ・ソルヴィーノ『誘惑のアフロディーテ』
第81回:ペネロペ・クルス『それでも恋するバルセロナ』
と、女優賞を連発。
ノミネートではジェラルディン・ペイジ『インテリア』の主演女優賞候補を代表に、助演部門は6人がウディ・アレン映画からオスカー候補に挙がっているのである。
そして更なる強者が候補入りを狙っている。
イギリスの大女優ジュディ・デンチ『あなたを抱きしめる日まで』である。
御年79歳を迎える彼女。60歳を過ぎてから、97年の初ノミネート以来実に6度の候補入り(内主演が4、助演が2)で、98年には『恋に落ちたシェイクスピア』で助演女優賞を獲得している。
近年視力の低下に伴って台本が読めなくなっていることを告白した彼女だが、まだまだ女優としてのキャリアは伸び盛りである。
さらにさらに、アカデミー賞の申し子が今年も来てます。もちろん最前列に座るでしょう。
実に17回のオスカー候補に挙がり、主演を2回、助演を1回受賞している大御所メリル・ストリープ『August: Osage Country』が配給会社ワインスタイン・カンパニーを味方につけて参戦。
何も言うことはありません。マジなんですね、その眼は。
これほどの全員がオスカー経験者となりそうな今年の主演女優賞。
誰ださっきミーハーな部門だと言った奴は、と野次が飛んできそうですが、こんなにミーハーな年はまず無いでしょう。
淡い期待を込めて、万が一この中に混じってきそうな人がいるならばこの人しかいないでしょう。
一昨年のオスカー作品賞に輝いた『アーティスト』でヒロインを演じ、一昨年の外国語映画賞で旋風を巻き起こした『別離』のアスガー・ファルハディ監督作に出演する、
ベレニス・ベジョ『The Past』です。
今年のカンヌ国際映画祭で女優賞を獲得した彼女。
カンヌとオスカーの相性が悪いのは有名ですが、遡ってみると、
第23回:ベティ・デイヴィス『イヴの総て』(ノミネート)
第25回:シャーリー・ブース『愛しのシバよ帰れ』(受賞)
第28回:スーザン・ヘイワード『明日泣く』(ノミネート)
第32回:シモーヌ・シニョレ『年上の女』(受賞)
第33回:メリナ・メルクーリ『日曜はダメよ』(ノミネート)
第34回:ソフィア・ローレン『ふたりの女』(受賞)
第35回:キャサリン・ヘプバーン『夜への長い旅路』(ノミネート)
第37回:アン・バンクロフト『女が愛情に渇くとき』(ノミネート)
第38回:サマンサ・エッガー『コレクター』(ノミネート)
第39回:ヴァネッサ・レッドグレーヴ『モーガン』(ノミネート)
第41回:ヴァネッサ・レッドグレーヴ『裸足のイサドラ』(ノミネート)
第47回:ヴァレリー・ペリン『レニー・ブルース』(ノミネート)
第51回:ジル・クレイバーグ『結婚しない女』(ノミネート)
第52回:サリー・フィールド『ノーマ・レイ』(受賞)
第61回:メリル・ストリープ『A Cry in the Dark』(ノミネート)第66回:ホリー・ハンター『ピアノ・レッスン』(受賞)
第69回:ブレンダ・ブレッシン『秘密と嘘』(ノミネート)
第79回:ペネロペ・クルス『ボルベール<帰郷>』(ノミネート)
こんなにもいる!
すいません。メモするつもりが思わず書いてしまいました。
つまり、可能性が無いとは言い切れないということです。
予想はこちら↓
(LOCK)
◎ サンドラ・ブロック『ゼロ・グラビティ』
◯ エマ・トンプソン『ウォルト・ディズニーの約束』
▲ ケイト・ブランシェット『ブルージャスミン』
△ ジュディ・デンチ『あなたを抱きしめる日まで』
(どちらか)
・ メリル・ストリープ『August : Osage Country』
・ ベレニス・ベジョ『The Past』
★★★次回は助演部門を男女両方あわせて予想します
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